忘年会問題の課題

「実験に使ったのはニジマスなんですが、エサを与えるのを止めたら、肉質が硬くなることがわかったんです。
最近は養殖魚が増えているから、出荷する前に絶食させて、肉質を改善するというのは技術的に可能だと思います。 今後の課題としては、その肉質をいかに維持させるかということですね」刺し身好きの日本人としては、Aさんの今後の研究成果を、指をくわえて待つことにしよう。
ゆで卵に目玉焼き、茶碗蒸しからオムライス、親子井…。 卵は私たちの食生活に欠かせない食材である。
卵は完全食品といわれるように、一個のうちにさまざまな栄養素がバランスよく含まれている。 そのうえ、洗ったり火を通したりと手をかけなくとも手軽に口にできる。
近頃は、さらにいろいろな効用をもった機能性食品としても注目を集めているようだ。 「私どもが作っている卵を、コレステロールの高い方に食べていただく実験をしたところ、だいたい30日で数値が平常に戻りました。
薬品を使わずに、卵でコレステロールを下げることができるんです」卵作りのプロ、I会長のIさんは続ける。 「コレステロールを下げる薬はありますが、とりすぎると体の活力がなくなり、やがて脳細胞が減ってきます。
ところが、卵を使って下げれば、そういう心配もないわけです」食品界の優等生である卵だが、昨今は価格的には戦後いちばんの安値であり、また、消費量も世界的に低下しつつあるという。 そんななか、Iさんはプラスアルファの機能をもった卵の開発に取り組んだ。

卵でコレステロールを下げる世界で卵の消費量が落ちている最大の原因は、そのコレステロールの高さだった。 そこで、コレステロールを下げる効果があるといわれるマグロの目の脂に注目。
これを卵に取り込むことを考え、実験を始めたのだ。 「アタマがよくなる、ということでも話題になったDHAですが、この脂はひじように変質しやすく、魚からとったままでは効果がなくなってしまうこともあるんです。
あるいは、匂いがあって、毎日食べ続けることが難しかったりと。 ところが卵の中に封じ込めてしまえば、酸素に触れないので変質しませんし、毎日でも食べられるというわけです」では、どうすれば「封じ込める」ことができるのか。
「DHAをニワトリに食べさせると、卵の中にも残ります。 ただし、ただ食べさせただけではダメ。
ノウハウが必要なんです。 この卵を作り始めた頃の実験では、一日に6個食べなければ効果があらわれませんでしたが、その後改良が重ねられ、一個あたりのDHAの量を増やすことができました」どんな調理のしかたをしても、どんな食べ方をしても効果は変わらない、とIさんは自信満々だ。
そして、Iさんが取り組んでいるもう一つの大切な仕事が、業界のチェック機構の整備である。 「われわれの調査では、現在、スーパーなどの店頭に並んだ卵のブランドは約250種類。

でもそれは多分にイメージを強調しただけのもので、何かに効果がある、というものではないのです。 中身が同じでパッケージだけ違うというような商品を売っていては、お客さまの卵への信頼がなくなってしまいます。
そこで、業界ぐるみで、自主的にチェック機能をもった協会を作ろうということになったんです」スーパーの棚をのぞくと、「有精卵」「ヨード卵」「地卵」などと銘うったブランド商品が、普通の卵とは別に並んでいる。 値段もちょっと高い。
これらは本当に特別な、いい卵なのだろうか。 「すべていいとはいえません。
たとえば、野つばらにワラを落としただけのところでできた卵がいいなどとうたった商品がありますが、実際は、卵が土壌や草に直接触れるのはひじょうに危険なんです」卵は生きている。 カラはいろいろなものを吸収しやすいし、気孔が空いているので細菌も入り込む。
それを、野ネズミやトンビ、スズメなどがいる野外に置いておくのはあぶないというわけだ。 そこで、Iさんたちはコンピュータを使って、ニワトリが空気のすんだ森の中にいるような環境を作るという、いままでには考えられなかった自然に近い卵を作ることを始めたという。
「それから検査機構も必要なんです。 アメリカでは卵の検査制度があって、農場から出荷するときに検査があります。
店頭でも抜き取り調査があって、販売停止になったりもするんです。 細菌の付着などを考えますと、日本でも検査制度を確立しなくてはならないですね」消費者にとって値段が安いのは結構なこと。
しかし、業界にとってはこのままでは苦しいのが実情だ。 「生産効率の面では、ニワトリも生きものですから、そう画期的なことはできません。
いまは供給過剰になっていますから、一個9円から15円くらいですけれど、本来はこんな値段で卵は作れないんですよ」ともあれ、消費者が望むのは安定した価格と、そして何より、安心して食べられる、ということ。 優等生には、価格の面でも質の面でも、ずっと優等生でいてもらいたいものだ。

ほかほかの白いごはんを、おいしく色あざやかに演出するエンターテイナー、漬もの。 しかし悲しきかな、今日びの健康ブームのなか、塩分を多く含んでいる漬ものを目の仇にする人がいる。
「日本人の悪いクセなんです。 罪人が出ると、その家族まで悪いって考えるでしょ。
塩分のとり過ぎが血圧を上げるのも、日本人が塩分をとり過ぎるのも事実だけど、だからといって塩分が入っている食品自体をやみくもに悪いというのは、ナンセンスですよ」国立健康栄養研究所のTさんは、漬もの悪者説に対して、科学者の立場から異論を唱える。 「漬ものは野菜とか果物から作られる、つまり食物繊維を多く含んでいるわけです。
食物繊維というのは体の中では分解されず、便と一緒に排出されるのですが、私はそこに注目したんです」さて、食物繊維がどのように関わっているのかはひとまずおいておき、この話のポイントとなる3つの物質について整理しよう。 まずは、血圧を上げる張本人である塩のナトリウム、野菜にたくさん含まれているカリウム、そして食物繊維である。
漬ものは悪くない「そもそも、漬ものはなんで野菜と塩を組み合わせているかというと、カリウムというのは味が悪い。 それで塩、つまりナトリウムを入れてカリウムと置きかえるわけです」では、私たちが漬ものを食べたとき、体の中ではどんな反応が起こっているのだろう。
「まず、胃の中に入ったカリウムとナトリウムは、胃のような酸性の環境下ではいったん野菜の繊維から離れます。 そして腸に行くと今度はアルカリ性の環境なので、再び結合する。
こういうのをイオン交換反応というんですが、おもしろいことに、腸へ入った野菜の繊維は、もともと一緒だったカリウムとではなく、ナトリウムとくっついてしまうんです」この後どうなるかは、勘のいい方ならもうおわかりだろう。 そう、便が排出されるとき、食物繊維がナトリウムを体から連れ出してくれるのだ。
「なぜナトリウムとくっつくのかというのは不思議なんですけれどね。 ただ、唾液、胃液、腸液、胆汁など、体液の中にはナトリウムがいちばん多い。
だから選択的にナトリウムとくっつきやすいんでしょう」食物繊維の主要な成分であるセルロース、また海藻に多く含まれるアルギン酸は、ナトリウムを連れ出す効果が高いそうだ。

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